2020年4月にロスアラモス研究所のグループが新しい変分量子アルゴリズムを提案しました[1]。
このアルゴリズムは、エネルギー固有値ではなく、ハミルトニアンと密度演算子の積における期待値を最小化することで、全固有値と固有状態を計算するアルゴリズムです。
まず、このアルゴリズムの評価関数は次のようになります。
ここで、 は密度演算子、 はクラスター、ハミルトニアンなどの変数が存在するオペレーター群になります。密度演算子というと少し難しく聞こえますが、これはただ固有状態で完全系をとっただけのものです。その形は、
となります。トレースを展開して、式(1)は、
となります。対角項のみならず、本来なら非対角項も計算しなければならないのですが、計算容量は有限なので、j=kと仮定し、直交していることを前提に計算します。
そうして、論文[1]における式(2)が導かれます。
この式(4)の計算結果はエネルギー固有値とその状態におけるその他状態とのオーバーラップの総和との内積になります。また、厳密解においては全状態は直交し、エネルギー固有値も最小であるため、この式における最小値は全状態における厳密解の総和となります。
論文の方では、断熱VQEの方法を用いてハミルトニアンを緩やかに計算反復回数に応じて変化させつつ本来のハミルトニアンに近付けることで最適化を行います。しかしながら、式(4)さえあれば、あとは最適化計算でエネルギー固有値を求めることができるので、それで最適化します。
その結果は、次回載せる予定です。
[1] Cerezo, M., and et. al., arXiv quant-ph:2004.01372v1(2020)