hwakのトリビアルな雑記集

初めまして、個人研究者のhwakです。個人的に量子アルゴリズムの研究をしております。

2024-01-01から1年間の記事一覧

量子シミュレーションの基礎:ラビ振動

今回は、量子シミュレーションを実際にどのようにして行うのか解説します。今回使用する系はラビ振動です。これは最も簡単な時間発展系の一つです。2準位間に遷移双極子モーメントが存在する場合、その準位間に相当する電磁波を照射することで、時間変化する…

ショットノイズがある系のSSVQE・後編

今回は、前回に引き続き、ショットノイズがある系におけるSSVQEの結果を考察します。 前回、ショットノイズ入りで計算した結果、原子間距離に関わらず精度が著しく低下しました。今回は収束を見ることで、その原因を調査します。条件は前回と同じですが、原…

ショットノイズがある系のSSVQE

今回は「blueqatで実装するショットノイズ:励起状態編 by Hikaru Wakaura | blueqat」と同様にショットノイズがある系におけるSubspace-Search Variational Quantum Eigensolver (SSVQE) methodにおける水素分子のフルポテンシャルを計算しました。SSVQEとは…

Quantum phase estimation, calculation of eigenvalues from phase.

In this article, I will show the results of calculating them using the method of calculating eigenvalues from phase in quantum phase estimation. In 'Quantum Phase Estimation and its problems by Hikaru Wakaura', I showed the results of calc…

Quantum Phase Estimation and its problems

In this series of two articles, I will explain the theory of quantum phase estimation and the precautions to be taken when performing it. Currently, research on NISQ computers is going downhill all over the world, and the realization of an…

blueqatにおけるショットノイズの実装

今回はQiskit_Aquaにおけるレガシーであるスタティスチカルノイズを実装しました[1]。ブルーキャットにはステートベクトル出力が実装されています。実際の量子計算では有限の観測回数で解の存在確率分布を出力しなくてはなりません。ステートベクトル出力は…

Introduction of a paper: On Quantum Simulation Of Cosmic Inflation

In this article, I would like to introduce a paper. This paper is an attempt to simulate one of the models in cosmology, inflationary cosmology, using quantum simulation. [2009.10921] On Quantum Simulation Of Cosmic Inflation (arxiv.org) N…

論文紹介:開放系における時間結晶

今回は、開放系における時間結晶を確率オートマトンをスピン列で再現した論文を紹介します。この論文の内容はこのようにまとめられます。 ・この時間結晶は熱浴と接しています。 ・進行方向を確率で決め、系を遷移させる確率セルオートマトンを時間結晶に使…

Grover's search algorithm

This entry introduces the Grover's search algorithm for parent entry 'Quantum Numerical Integral using Quantum Amplitude Amplification'. This algorithm can search aimed data taking advantages of quantum superpositioned states from unsorted…

論文紹介、行列積状態を用いたノイズシミュレーション。

今回は、matrix product density operator(MPDO)を用いたノイズシミュレーターの研究論文を紹介します。これは、状態ではなく密度行列にテンソル積を掛けてノイズを表すことで、ノイズを既存のあらゆる手法を超える精度で再現できたことを示しました。 Phys.…

量子計算機におけるノイズの基礎:自然放射

量子計算機におけるもっとも単純なノイズである自然放射の理論上における扱い方を解説します。自然放射はあらゆる量子系に存在する光子を放出して状態が遷移する過程です。これはマスター方程式で解ける状態の中でもっとも簡単です。それには下式のようなマ…

論文紹介:量子シミュレーションを利用したインフレーションの研究

今回は、ある論文を紹介します。この論文は、量子シミュレーションを用いて宇宙論におけるモデルの1つであるインフレーション宇宙論におけるそのシミュレーションを試みるというものです。 [2009.10921] On Quantum Simulation Of Cosmic Inflation (arxiv.o…

Subspace Search Variational Quantum Eigensolver法における遷移双極子

今回、「初心者向けSubspace-Search Variational Quantum Eigensolver(SSVQE)の解説 by Hikaru Wakaura 」の続きとして、Subspace-Search Variational Quantum Eigensolver(SSVQE)法を用いた遷移双極子モーメントの計算を行います。 SSVQE法においては、任意…

初心者向けSubspace-Search Variational Quantum Eigensolver(SSVQE)の解説【実践編】

この記事は、前回「初心者向けSubspace-Search Variational Quantum Eigensolver(SSVQE)の解説 」の続きです。今回は水素分子における基底状態と励起状態のエネルギー準位を計算します。 今回は、UCCSDをクラスターとして利用し、深さ2のSTO-3Gの第二量子化…

初心者向けSubspace-Search Variational Quantum Eigensolver(SSVQE)の解説

今回は、NISQ量子計算機における励起状態計算手法としてVariational Quantum Deflation(VQD)と並ぶ主流であるSubspace-Search Variational Quantum Eigensolver(SSVQE)法[1]の解説をします。この方法は非常にシンプルなのですが、実に奥が深く、将来性のある…

量子シミュレーションを用いた原子核物理

今回は量子シミュレーションを用いた素粒子物理学の研究について紹介します。 量子シミュレーションにおいても、量子電磁気学における量子場の時間発展を計算する方法が確立されました。これは、ゆくゆくは量子式力学における弱い核力相互作用が存在する系の…

ベイジアン量子位相推定

今回は、ベイズ位相推定を利用して複数状態における位相と固有値、固有状態を同時に計算する、ベイジアン量子位相推定の方法を解説します。このアルゴリズムは、通常の量子位相推定とだいぶ方法が違います。このアルゴリズムは図1の回路を利用します。この回…

論文紹介:量子シャドウトモグラフィー。

今回は量子シャドウトモグラフィーを用いて密度行列状態を推定する方法を紹介します。量子トモグラフィーとは、状態を表す密度行列をパウリ演算子の直積でその要素が表せることを利用して測定し、状態を推定する技術です[1]。この方法はノイズの多い系におい…

【昔の研究内容紹介】スピン渦誘起ループ電流を利用した量子計算機に関する理論的研究

今回は、私が以前取り組んでいた研究テーマについて説明します。私は博士課程に在籍していた折、スピン渦誘起ループ電流を利用した量子計算機の研究をしていました。この電流は、銅酸化物高温超伝導体における伝導層に流れるナノサイズのループ電流です。極…

研究論文紹介:量子カートポール問題の機械学習における解法

今回は深層学習を用いて量子カートポール問題における持続時間を延ばし、エネルギーをより固有値に近付けた研究を紹介します。これは、量子力学的に表されたカートポール問題をポールにかかる力Fを報酬決定のための変数としてQ関数を最大化しカートポールを…

Re:ゼロから始める量子多クラス分類

この記事は、量子サポートベクターマシーンを利用して、MNISTから配布されているデータベースの分類を行う方法をある程度略して説明するものです。変分量子計算の方法論は、機械学習における分類問題にも応用されています。その1つがQuantum Support Vector …

反復量子位相推定アルゴリズム【実践編】

今回は、前回「反復量子位相推定アルゴリズム by Hikaru Wakaura 」に引き続き、反復量子位相推定[1]における実際の計算を行う際の注意点を説明し、実践した結果を示します。 事前に、固有値を求めるハミルトニアンにおける固有値の最大値と最小値の差 をと…

反復量子位相推定アルゴリズム

今回は、反復量子位相推定アルゴリズムの説明をします。Abrams氏とLloyd教授による量子位相推定の量子計算への応用可能性が示唆されてから8年後にGoranらによってより高速に計算できるようにこの方法が考案されました。このアルゴリズムは、量子位相推定にお…

論文紹介:ノイズ耐性のあるブラインド量子計算

今回はブラインド量子計算をノイズに耐性を持たせて行う研究を紹介します。この論文における要点は次の通りです。 ・光ファイバーにおける伝送ノイズに強いブラインド量子計算を実現するものです。 ・ビームスプリッターを組み合わせて’ノイズプロセッシング…

論文紹介:固有状態熱化仮説

今回は量子情報熱力学の重要概念である固有状態熱化仮説(ETH)の話をします。これは、量子系における物理量の固有状態におけるトレースは、小正準集団に無限時間後に一致するというものです。これは経験則でありながら非可積分系全般といくつかの可積分系に…

論文紹介:量子モンテカルロの新手法、Variational Quantum Amplitude Estimation

今回は、2021年に出てきた新しい量子モンテカルロ手法であるVariational Quantum Amplitude Estimation(VQAE)の提案論文「[2109.03687] Variational quantum amplitude estimation (arxiv.org)」を紹介します。 これは量子モンテカルロ法における計算時間の…

量子位相推定・位相からの固有値計算

今回は、量子位相推定において、位相から固有値を計算する方法でそれらを計算した結果を示します。 「量子位相推定とその注意点 by Hikaru Wakaura 」の方では、Variational Quantum Eigensolver(VQE)法と同様に、固有状態でハミルトニアンを挟んでこれらを…

量子位相推定とその注意点・後編

この記事では、前回に引き続き量子位相推定の性能とその限界を論じます。今回t=10、n=4として、Uを掛ける回路のトロッター展開深さは10としblueqatを用いてシミュレーションしました。STO-3G基底における水素分子のハミルトニアンにおける量子位相推定におけ…

量子位相推定とその注意点

この記事では、量子位相推定の理論と、それを実行する際の注意点を全2回で説明します。現在NISQ計算機における研究は世界中で下火になっており、誤り耐性量子計算機の実現が嘱望されています。これを実現することで、ようやくグローバー、量子フーリエ変換、…

デコヒーレンスとノイズ

今回はノイズとそれが原因で起こるデコヒーレンスについて説明します。これは簡単に言えば量子重ね合わせの劣化です。これが起こると量子計算の結果が意図しないものになります。そもそも、ノイズは絶対零度でない限り必ずどのような系のも存在します。量子…