hwakのトリビアルな雑記集

初めまして、個人研究者のhwakです。個人的に量子アルゴリズムの研究をしております。

研究サイドから見た2020年の量子情報まとめ

この記事は再掲ですので、昔の内容です。

今年も残り48時間を切ってしまいました。量子情報研究分野にとって重要な成果が立て続けに発表された年が終わろうとしています。

コロナ禍ということもありましたが、今年は量子計算機、そして量子情報分野にとって大きな躍進の年になりました。6月に米Honeywell社から量子体積64の量子コンピューターがリリースされ、その後Ion-Q社から量子体積400万の量子コンピューターがリリースされたことで、量子ビットの忠実性はすでに実用段階に入りつつあります(ただし、イオントラップ型のみ)。そして10月に米IBM社から2023年までに1000量子ビット量子計算機をリリースするとの発表があり[1]、そこに至るまでのロードマップが公開されました。来年には127量子ビット系を実現するそうなので、10量子ビット以上の量子計算機が一般にも無償で利用可能になる日もそう遠くないかもしれません。

それに伴い、量子計算機アルゴリズムの研究成果も全世界から報告されました。4月には密度行列を利用したVariational Quantum State Eigensolver(VQSE)[2]、6月にはMultiobjective Genetic VQE(MoG-VQE)[3]、そして7月には密度行列繰り込み群の性質を応用したDeep-VQE[4]が発表されました。また、ADAPT-VQEの研究は高い精度が出ることから世界中で注目され、様々な形で発展的な内容の研究成果が報告されました。QAOAに応用したADAPT-QAOA[5]、更には時間発展を記述可能な発展型[6]まで発表されました。また、そちらはあまり追っていませんが、量子人工知能分野でも、様々な企業が多くの研究成果を示したようです。

扱える基底はまだ限られており、量子ビットの制約がある中で研究しなければなりませんが、未来は明るそうです。

発展したのは、量子計算機周辺にとどまりません。

今年、とうとう実験的に量子重力を観測する方法について言及する論文が発表されました[7]。10月に開催されたIOP Quantum 2020でも招待講演でこのテーマを扱った方がいました[8]。既に多くの研究グループがこれを実現しようと試みています。今まではお世辞にも有名とは言い難かった量子重力の研究が、ここにきてブームとなりつつあります。大型加速器ではなく、重力子ビームスプリッタによって重力量子理論の研究が進む日も遠くない様です。

このように、量子計算機、量子情報の分野はあらゆる面で今年大きく発展しました。これは量子計算機の時代が来る序章のようにも見えます。来年以降の発展が楽しみになってしまいますね。

しかしながら私も量子情報を研究する身。負けていられません。

それでは、よいお年を。

[1]https://jp.techcrunch.com/2020/09/24/2020-09-15-ibm-publishes-its-quantum-roadmap-says-it-will-have-a-1000-qubit-machine-in-2023/

[2]Cerezo, M., and et. al., arXiv quant-ph:2004.01372v1(2020)

[3]Chivilikin, D, and et. al., arXiv quant-ph:2007.04424(2020)

[4]Keisuke, F, and et. al., arXiv quant-ph:2007.19017v1(2020)

[5]Zhu, Tang, Barron, Mayhall, Barnes, Economou, arXiv:2005.10258(2020)

[6]Yao, Y-X, and et. al., arXiv- quant-ph:2011.00622(2020)

[7]van de-camp, T. W. and et. al., arXiv quant-ph:2006.06931v2(2020)

[8]Vedral, V, Quantum totalitarianism and gravity, IOP Quantum 2020, main stage content 22.10(2020)  

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