2024-04-01から1ヶ月間の記事一覧
今回は、前回「反復量子位相推定アルゴリズム by Hikaru Wakaura 」に引き続き、反復量子位相推定[1]における実際の計算を行う際の注意点を説明し、実践した結果を示します。 事前に、固有値を求めるハミルトニアンにおける固有値の最大値と最小値の差 をと…
今回は、反復量子位相推定アルゴリズムの説明をします。Abrams氏とLloyd教授による量子位相推定の量子計算への応用可能性が示唆されてから8年後にGoranらによってより高速に計算できるようにこの方法が考案されました。このアルゴリズムは、量子位相推定にお…
今回はブラインド量子計算をノイズに耐性を持たせて行う研究を紹介します。この論文における要点は次の通りです。 ・光ファイバーにおける伝送ノイズに強いブラインド量子計算を実現するものです。 ・ビームスプリッターを組み合わせて’ノイズプロセッシング…
今回は量子情報熱力学の重要概念である固有状態熱化仮説(ETH)の話をします。これは、量子系における物理量の固有状態におけるトレースは、小正準集団に無限時間後に一致するというものです。これは経験則でありながら非可積分系全般といくつかの可積分系に…
今回は、2021年に出てきた新しい量子モンテカルロ手法であるVariational Quantum Amplitude Estimation(VQAE)の提案論文「[2109.03687] Variational quantum amplitude estimation (arxiv.org)」を紹介します。 これは量子モンテカルロ法における計算時間の…
今回は、量子位相推定において、位相から固有値を計算する方法でそれらを計算した結果を示します。 「量子位相推定とその注意点 by Hikaru Wakaura 」の方では、Variational Quantum Eigensolver(VQE)法と同様に、固有状態でハミルトニアンを挟んでこれらを…
この記事では、前回に引き続き量子位相推定の性能とその限界を論じます。今回t=10、n=4として、Uを掛ける回路のトロッター展開深さは10としblueqatを用いてシミュレーションしました。STO-3G基底における水素分子のハミルトニアンにおける量子位相推定におけ…
この記事では、量子位相推定の理論と、それを実行する際の注意点を全2回で説明します。現在NISQ計算機における研究は世界中で下火になっており、誤り耐性量子計算機の実現が嘱望されています。これを実現することで、ようやくグローバー、量子フーリエ変換、…
今回はノイズとそれが原因で起こるデコヒーレンスについて説明します。これは簡単に言えば量子重ね合わせの劣化です。これが起こると量子計算の結果が意図しないものになります。そもそも、ノイズは絶対零度でない限り必ずどのような系のも存在します。量子…
この記事は、前回「初心者向けMutiscale-Contracted Variational Quantum Eigensolver(MCVQE)法【理論編】」の続きです。 この記事ではMCVQEで実際に水素分子の基底状態、三重項状態、一重項状態におけるエネルギー準位を計算した結果を示します。ハミルトニ…
2019年にQCWareから発表されて一時期話題になったMultiscale-Contracted VQE法の解説をします[1]。このアルゴリズムは、大規模量子系における励起状態を効率よく高精度に計算できることが示されています。 ハミルトニアンと基底をPauli演算子で表されること…
今回は可積分系であるXXZ系における時間発展を断熱量子シミュレーションでシミュレーションします。ある状態から時間発展を始めてそこに戻ってくる(初期状態が観測される)確率をロシュミットエコーと言います。この確率は手計算でも導出可能[1]ですが、量子…
今回は、トポロジカル相によって作られる時間結晶について解説します。これは1次元系におけるHaldaneトポロジカル絶縁体において時間結晶が出現することを示す論文です。 これは、時間変化する有効ハミルトニアンを使うのは通常のものと同じですが、タイムク…
今回は「Phys. Rev. Lett. 120, 181301 (2018) - Soft-Hair-Enhanced Entanglement Beyond Page Curves in a Black Hole Evaporation Qubit Model (aps.org)」を紹介します。これはブラックホールにおけるエントロピーとホーキング輻射における負の比熱の期…
今回、Variational Quantum Eigensolcver(VQE)法における非対角項の計算について説明します。VQE法においては、励起状態を順次計算し、それらの間の重ね合わせ状態を作る方法はQunasys社によって発表される[1]までは、確立されていませんでした。これには、…
今回は、マヨラナ粒子とトポロジカル計算について解説します。マヨラナ粒子はマイクロソフトが量子計算機における量子ビットとして研究しているものでしたが、今年その根拠となる論文が誤りであることが発覚しました。それから論文撤回が相次いで、悪名高い…
今回は、「 世界一わかりやすいVariational Quantum State Eigensolver(VQSE)【実践編】 」の続きとして、Varitional Quantum State Eigensolver(VQSE)[1]を利用した水素分子のフルポテンシャルを計算しました。前回と同様に、基底関数はSTO-3G、回路の深さ…
この記事は、前回「世界一わかりやすいVariational Quantum State Eigensolver(VQSE)【理論編】」の続きです。 世界一わかりやすいVariational Quantum State Eigensolver(VQSE)【理論編】 | 今回、VQSE法[1]を用いてblueqat SDKで水素分子における基底状態…
2020年4月にロスアラモス研究所のグループが新しい変分量子アルゴリズムを提案しました[1]。 このアルゴリズムは、エネルギー固有値ではなく、ハミルトニアンと密度演算子の積における期待値を最小化することで、全固有値と固有状態を計算するアルゴリズムで…
量子シミュレーションについえ正確にご存知でしょうか。これは広義には量子系における時間発展をシミュレーションすることですが、今日、万能ゲート型量子計算器の発展によってその状況は複雑化しつつあります。現在、この手法は次の3種類に分かれています。…
今回は、量子計算機を用いた高分子触媒系における現状での計算時間をまとめた論文を紹介します。この論文は特にFeMoCoという窒素固定におけるその時間発展過程を量子位相推定を用いて計算する場合における所要ゲート数、計算時間についてまとめたものです。F…
初めまして、個人研究者のhwakです。 私は個人的に量子アルゴリズムの研究をしておりまして、論文も幸いなことに何本か書かせて頂いております。 この度以前 blueqat 社に書かせて頂いていた量子計算分野における量子計算アルゴリズムとその実装、量子計算の…
今回は可積分系、特に量子可積分系の話をします。可積分系というのは積分、微分、変数変換、微分方程式を解く、四則演算を組み合わせて解け、完全積分可能な全微分方程式で表せる系のことです[1]。このような系においては要素数が増えるほどに保存則を表す式…
今回は、つい最近出た量子電子回路を用いたホーキング輻射1*の再現結果を説明します。これは、ジョセフソン素子を用いて回路上にポテンシャルを用いた擬似的なシュバルツシルト半径2*を作り出すことで、光子がそこから逃げられない状況を作り出し、そこから…
今回は新種の変分量子計算を利用したたんぱく質折り畳み問題を解く方法を紹介する論文です。この論文はアンジオテンシンという一次元の9つのタンパク質分子が連なった鎖として表せる薬剤における最適な折りたたみ方をConditional Value-at-Risk Variational …
今回は時間結晶(タイムクリスタル)の説明をします。これは空間方向ではなく時間方向に離散的な並進・回転操作によって一定の単位構造によって系全体を埋められる系のことです。結晶というのは、単位構造に対して並進操作、回転操作を有限あるいは無限回繰り…