hwakのトリビアルな雑記集

初めまして、個人研究者のhwakです。個人的に量子アルゴリズムの研究をしております。

論文紹介:量子モンテカルロの新手法、Variational Quantum Amplitude Estimation

今回は、2021年に出てきた新しい量子モンテカルロ手法であるVariational Quantum Amplitude Estimation(VQAE)の提案論文「[2109.03687] Variational quantum amplitude estimation (arxiv.org)」を紹介します。

 

これは量子モンテカルロ法における計算時間のエラーレートに対する関係を改善するためのものです。量子モンテカルロ法、古典モンテカルロ法とは、特定の関数f(x)≒∑jMcjhjにおける右辺を左辺に近付けるための手法です。通常の量子モンテカルロ法においては計算時間はエラーレートεに対してO(1/ε)となりますが、これはサンプル数Mに対して2M個に分割した場合のものです。しかし、この論文で提案された手法はエラーレートに対してO(1/ε1+β)の精度を発揮し、サンプル数はMです。βは完全な古典モンテカルロに対して1となり、量子の場合には0となる定数です。実際の計算ではその間となります。このモンテカルロ法における最も時間を要する部分はグローバー演算子を複数かける部分です。これを変分計算で再現することで、計算回数を減らしたうえで精度を上げるのが、VQAE法の概要です。その流れは図1に示すものです。後処理のθを最適化する部分はグリッドサーチで5000点に対して行います。

図1 論文で紹介されたVQAEのフローチャート。Qはグローバー演算子です。

 

この手法は私の論文の内容としたFrame Superposition Cluster(FSC)[1]と非常に似通った手法を用いているため、親近感を覚えました。しかしながら、最適化の手法については説明されていない部分もあり、それ次第では量子モンテカルロ以上の時間を要するのではないかとも考えられました。方法は非常に優れているので、そこの説明が追加されればよりよい論文になる事が期待されます。

 

[1][2107.02979] Frame Superposition Cluster: The method to derive the transition matrices in high accuracy (arxiv.org)

楽天Kobo