hwakのトリビアルな雑記集

初めまして、個人研究者のhwakです。個人的に量子アルゴリズムの研究をしております。

量子シミュレーションを用いた原子核物理

今回は量子シミュレーションを用いた素粒子物理学の研究について紹介します。

量子シミュレーションにおいても、量子電磁気学における量子場の時間発展を計算する方法が確立されました。これは、ゆくゆくは量子式力学における弱い核力相互作用が存在する系の時間発展を計算することを意識して発展しています。そうして古典計算機における計算不能な課題を解決することを目指して、多くのグループがこの分野の研究を行っています。今はまだ、量子力学における自然界の4つの基本力のうち、電磁気学相互作用しか量子計算機の現状のリソースでは扱うことができません。

電弱統一理論素粒子:

この宇宙には四つの基本力が存在し、それらによって物質が存在しています。電磁力、強い核力、弱い核力、重力です。電磁力は電場と磁場の相互作用で、分子と原子を形作ります。その原子核を形成する力が強い核力です。これは原子核を構成する陽子と中性子、その構成するクォークを結びつけるもので、赤、青、緑の三種類の色価によって起こります。

弱い核力は、クォークの間の相互作用を媒介する力でWボソン、Zボソン、クォークのアイソスピンによって起こります。これは原子核におけるベータ崩壊、逆ベータ崩壊にも関与し、核反応を支配する力です。この力は、クォーク間に複雑な相互作用をもたらし、水素原子同士の衝突でもそのダイアグラムは複雑になります。 

このうちの強い核力のみシミュレーションが現在可能であり、それを記述する理論が量子色力学です。古典計算機でこれをシミュレーションする方法が作られており、これは時空を格子に分けて記述するので格子Quantum Chromodynamics(QCD)[1] と呼ばれています。

計算手法:

これを記述する為のモデルがシュウィンガーの格子電磁場ハミルトニアンです[2]。これは電磁場をそこに存在する粒子の種類と数と一緒に生成、消滅させる演算子によって記述される場のハミルトニアンを基に、電磁場をゲージ変換として空間と時間を格子で表しそれにおける粒子の生成、消滅演算子で系の様子を表現するものです。

このモデルで量子電磁気学系における時間発展がイオン・トラップ量子計算機でシミュレーションされた結果が報告されました。こちらもインフレーション宇宙論のシミュレーション同様、誤り耐性量子計算機が実現されるのを待った方がよさそうです。

[1]http://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~soken.editorial/sokendenshi/vol18/yamada.pdf

[2]https://www.phy.anl.gov/npqi2018/talks/muschik.pdf

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