今回は、クォンティニュアム社が開発した新規 VQE である Filtering VQE の解説をします。
これは、フィルタを利用することで勾配計算を行う際に収束を早めるものです。
通常の VQE は評価関数をエネルギーを状態で挟んだ期待値としますが、この手法はハミルトニアンを含んだフィルタ を パラメトリック量子回路とパラメーター更新前の状態で挟んだ内積を計算し、その微分値でパラメーターを更新します。
論文では因果円錐計算法など様々なテクニックを用いて、マックスカット問題におけるハミルトニアンを量子アニーリング方式で解いています。
そうして、自社のイオントラップ型量子計算機で量子ビット数を変えて計算を行ったところ、逆ハミルトニアン、対数ハミルトニアン、虚時間発展演算子フィルタで通常の VQE と Quantum Approximate Optimization Algorithm (QAOA) における計算精度を上回り、計算時間も短くなりました。
VQE における精度向上の手段はいくつかありますが、最適化の手法を改善するのはあまり例を見ません。
この手法はいずれ発展型が開発されて今後のスタンダードになるかもしれません。
因果円錐計算法 : 期待値計算の際に不要なゲートを削除して行うことでエラーの可能性と計算時間を低減する手法の一つ。相対論における因果円錐に似ていることからこの名が付きました。
マックスカット問題 : 無向グラフに一度だけ切れ目を入れて、カットされたノードの重みが最大になるようにする問題。
https://arxiv.org/pdf/2106.10055