hwakのトリビアルな雑記集

初めまして、個人研究者のhwakです。個人的に量子アルゴリズムの研究をしております。

初心者向けSubspace-Search Variational Quantum Eigensolver(SSVQE)の解説【実践編】

この記事は、前回「初心者向けSubspace-Search Variational Quantum Eigensolver(SSVQE)の解説 」の続きです。今回は水素分子における基底状態励起状態のエネルギー準位を計算します。

 

今回は、UCCSDをクラスターとして利用し、深さ2のSTO-3Gの第二量子化されたハミルトニアンをBravyi-Kitaev変換して使いました。両者の深さは2です。

望む状態のみを計算するために、条件項を評価式に加え、評価関数は、

 

 

としました。

 

 

ここで  U_k  U_k^{ aim . } はそれぞれ条件とするオブサーバブルとその目的とする値です。

 

  

今回は磁気モーメントとスピンの二乗、電子数とします。最適化手法にはPowell法とBFGS法を使い、それぞれにおける計算結果を比較します。それぞれにおける計算反復回数は2000回と22回です。

それぞれで水素分子における基底状態、三重項状態、一重項状態、二電子励起状態の4準位を2準位ずつ原子間距離0.1から2.5(Å)までの範囲で0.1刻みで計算した結果を図1に示す。

図1(Powell)を見るに、基底状態、三重項状態においてはエネルギー準位における厳密解にほぼ一致していますが、一重項状態と二電子励起状態においては外れています。対して、図1(BFGS)を見るに、全状態がほぼ厳密解に一致しています。二電子励起状態だけが少し厳密解の下にある程度となります。

Powell法を用いた場合、これは通常のVQE法における計算精度に劣ります。逆にBFGS法を用いた場合はほぼ同等となります。つまり、このアルゴリズムは最適化手法によって、通常のVQEにおける計算結果と精度の良しあしが変わるのです。

  

図1 Powell法、BFGS法のそれぞれで水素分子における基底状態、三重項状態、一重項状態、二電子励起状態をSSVQE法で計算した結果。

 

しかしながら通常のVQE法における計算と比較して、計算時間はわずかにかかります。また、4準位を一度に計算する場合は、これより少し各準位の精度が落ちます。より多くの準位を高精度で計算するには、まだまだ改善の余地があるように思われます。

 

次は、非対角項計算手法を説明し、実際に遷移行列と遷移双極子を計算します。

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