hwakのトリビアルな雑記集

初めまして、個人研究者のhwakです。個人的に量子アルゴリズムの研究をしております。

初心者向けMutiscale-Contracted Variational Quantum Eigensolver(MCVQE)法【実践編】

この記事は、前回「初心者向けMutiscale-Contracted Variational Quantum Eigensolver(MCVQE)法【理論編】」の続きです。

 

この記事ではMCVQEで実際に水素分子の基底状態、三重項状態、一重項状態におけるエネルギー準位を計算した結果を示します。ハミルトニアンはBravyi-Kitaev変換し、基底もそれで変換しました。クラスターはUCCSDを用い、それもそれで変換しました。CISの元となる状態はSSVQEで計算し、古典最適化には論文[1]と同じBFGS法を用いました。計算にはすべてblueqat SDKを使いました。

 

Fig. 1に各準位のエネルギーを5回r=0.7の場合にSSVQEとMCVQE別でそれぞれ計算した値を示します。

SSVQEにおける基底状態、三重項状態におけるエネルギー準位は精度良く計算できているが、一重項状態においては大きく厳密解から逸れました。しかしながら、それを基に計算されたMCVQEにおける準位は基底状態において厳密解を下回る値はあるものの、精度が改善されるケースもありました。

試行bでは特にその傾向が見られました。

Fig. 1 SSVQE、MCVQEにおける各準位の水素原子間距離r=0.7における5回の計算結果。

 

Fig. 2にそれぞれで計算された各準位のSTO-3G基底における厳密解との差の常用対数(対数エラー)を試行ごとに示します。

こちらでも試行bにおけるMCVQEの対数エラーはSSVQEより小さいです。また、試行cにおける対数エラーは一重項状態以外においては小さくなっていました。

Fig. 2 SSVQE、MCVQEにおける各準位の水素原子間距離r=0.7における計算施行5回それぞれにおける対数エラー。

 

しかしながら、MCVQEにおける精度のどれだけ高くなるかは元状態における精度に依存する傾向が認められました。その点では、論文[1]におけるMCVQEの精度が悪く、QCWareの元論文における精度がQSEを用いたため高くなる[2]先行結果に一致します。

次回は、QSEを用いた場合における精度とも比較しようと思います。

 

 

[1] Nakanishi, K. M., and et. al., arXiv quant-ph:1810.09434v2(2018)

 

[2] Parrish, R. M. and et. al., arXiv quant-ph:1901.01234v2(2019)

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