hwakのトリビアルな雑記集

初めまして、個人研究者のhwakです。個人的に量子アルゴリズムの研究をしております。

デコヒーレンスとノイズ

今回はノイズとそれが原因で起こるデコヒーレンスについて説明します。これは簡単に言えば量子重ね合わせの劣化です。これが起こると量子計算の結果が意図しないものになります。そもそも、ノイズは絶対零度でない限り必ずどのような系のも存在します。量子計算機においては、ビットの構造からくる内的ノイズと、外部からの操作によって起こる外的ノイズが量子計算に影響します。前者は超伝導型におけるジョセフソン接合ノイズとクーパー対における平均自由行程[1]、イオントラップ型における自然放射などです。後者は量子ビットを操作する際に使用する電磁場ノイズと系内の熱勾配などです。

結果、デコヒーレンスが起こります。ノイズによるゲートの失敗、自然放射によって起こるフリップ、その他ノイズによる位相シフトがそうです。2量子ビット以上にはエンタングルメントを破壊するものもあります。これらの影響は熱浴に相当する量子ビットとの相互作用とそれらへの情報流出と解釈できます。これを記述するのにはフォンノイマン方程式が使われます[2]。これは有限温度の系における量子状態の時間発展を表せる方程式です。たにつ量子ビットの系においても簡略化されたノイズ系しか手で解くことは出来ないほど複雑になります。これらは量子マスター方程式、カルデイラレゲット模型[3]等があります。

しかしながら理論だけでノイズを再現するには限界があります。なので、実際の量子計算機を作りそのノイズをシミュレーターで再現するのが一番のようです。

 

[1]Hikaru Wakaura and Hiroyasu Koizumi 2017 J. Phys. Commun. 1 055013

[2]Giuliano Benenti, Giuliano Casati, and Giuliano Strini. Principles of Quantum Computation and Information Volume I: Basic Concepts. Splinger, 2004

[3]A. Altrand and B. Simons, Condensed Matter Field Theory, First Edition(2006)

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