今回は、ベイズ位相推定を利用して複数状態における位相と固有値、固有状態を同時に計算する、ベイジアン量子位相推定の方法を解説します。このアルゴリズムは、通常の量子位相推定とだいぶ方法が違います。このアルゴリズムは図1の回路を利用します。この回路はdこの状態に相当する標的ビット群と、d+1次元の制御演算空間からなります。量子計算機は2n次元の空間を扱うのが構造上無難なため、d+1=2nとした方がいいです。ここで、Hd+1は通常のアダマールゲートではなく、
を満たすゲート、Sφd+1は対角項に
掛けるためのゲートです。φnはランダムに決定される位相です。また、UCは制御ビット群が の場合のみ標的ビット群における各状態にUを掛けるゲートです。この回路を作用させて、最終的にθnを状態nの固有位相として、状態oにおける位相φ、Mに対する存在確率は、
とします。そこからベイズ確率分布
このアルゴリズムを含めて、量子位相推定の研究は近年急速に発展しました。そうしてその派生形、発展系が複数でき、エラー確率の議論もなされ始めました。この分野はまだこれからです。
図1 ベイジアン量子位相推定の回路。
[2010.09075] Bayesian Quantum Multiphase Estimation Algorithm (arxiv.org)