今回は、量子シミュレーションを実際にどのようにして行うのか解説します。今回使用する系はラビ振動です。これは最も簡単な時間発展系の一つです。2準位間に遷移双極子モーメントが存在する場合、その準位間に相当する電磁波を照射することで、時間変化する量子重ね合わせが作れるというものです。この現象は量子計算にも利用されます。まずはラビ振動のハミルトニアンとその時間発展を説明します。
ラビ振動:
2準位系を考え、そのハミルトニアンが時間発展する場合を考えます。そんの場合、波動関数は、
となります。ここで ℏ はディラック定数で、プランク定数を 2𝜋 で割ったものです。シュレディンガー方程式を簡略化して、
となります。 非対角項は遷移相互作用です。これは遷移双極子モーメントと電磁波のベクトル内積としてあらわされます。こうして式(2)は、
と改められます。
この式は回転波近似を施すことで、時間依存しない形に直せます。
指数項と外部電磁波の部分は 𝜔 =( 𝐸1 − 𝐸0)/ℏ の場合には、時間依存しない項と2𝜔に依存して時間発展する項の和になります。
後者は平均がゼロになるため寄与は無視することが可能です。そのため前者のみとします。
こうして、
となります。 後は通常のシュレディンガー方程式と同じです。これを解いて、
となります。
シミュレーションとその結果:
これらのものはblueqatで容易にシミュレーション可能です。
1量子ビット系においては をこの記事の時間発展ゲートによって量子ビットに印加するだけです。
今回は とします。
ここで、Tはシミュレーションを行う時間フレーム数で300とします。
図1を見ると、ラビ振動の1周期が再現できていることがわかります。しかしこれだけでは、 𝑅 𝑦 ゲートのシミュレーションしかできません。次回は、位相付きラビ振動のシミュレーション方法を解説します。