今回は可積分系であるXXZ系における時間発展を断熱量子シミュレーションでシミュレーションします。ある状態から時間発展を始めてそこに戻ってくる(初期状態が観測される)確率をロシュミットエコーと言います。この確率は手計算でも導出可能[1]ですが、量子計算機で解く方が早く、ほかの状態における存在確率も計算できるためそちらで計算します。そのハミルトニアンは
となり、周期境界条件が適用されます。今回はN=4とします。サンプリングする時間範囲は として600刻みで計算しました。
その結果、図1に示しますように、Δ=2の場合は初期状態とした ,初期状態では存在確率0とした がそれぞれの周期で変化しました。
中でも、状態 は小さい波との合成波となってかわるがわるラビ振動のように周期変化します。しかし、図2のようにΔ=0の場合には、周期変化はあるものの状態 における存在確率が単調増大し、最終的にはこの状態のみになります。
可積分系とそうでない系の違いは存在確率にも出ます。なので、いずれは量子計算機で新たな可積分系が見つかるかもしれません。
図1 時間t/Tに対する各状態のΔ=2における存在確率。
図2 時間t/Tに対するΔ=1における時間発展。
[1] https://www.math.sci.hokudai.ac.jp/~wakate/mcyr/2018/pdf/00100_sato_jun.pdf