hwakのトリビアルな雑記集

初めまして、個人研究者のhwakです。個人的に量子アルゴリズムの研究をしております。

Varitional Quantum State Eigensolverを用いたフルポテンシャル計算

 今回は、「 世界一わかりやすいVariational Quantum State Eigensolver(VQSE)【実践編】 」の続きとして、Varitional Quantum State Eigensolver(VQSE)[1]を利用した水素分子のフルポテンシャルを計算しました。前回と同様に、基底関数はSTO-3G、回路の深さはクラスタハミルトニアンともに2、最適化手法はPowellです。図1,2に、VQSEにおける水素分子間距離0.1から2.5(Å)までを0.1刻みでとって計算した基底状態、三重項状態、一重項状態、二電子励起状態におけるエネルギー状態準位とその厳密解との差の絶対値の常用対数(対数エラー)を示します。基底状態における精度はさほど高くなく、化学精度(対数エラ-2.8以下)には達しませんでした。しかしながら、二電子励起状態は他手法において精度が芳しくないにもかかわらず、いい精度が出ました。

 

図3に全状態におけるポテンシャル曲面を示しますが、こちらを見ると、縮退準位は原子間距離に関わらず別々の値にばらけてしまいました。やはり、原子間距離に関わらず縮退には弱いようです。なので、縮退準位における計算精度を上げるためには、縮退準位の計算に適した初期状態を入力しなければならないようです。

 

量子位相推定における計算結果と比較すると、量子位相推定の方は21時間で精度が保証されていることによって一部の準位が所定の精度で計算できているのに対して、こちらの方は精度が出ていない準位があるものの、1時間半程度でr=0.1における計算が終わります。

 

図1 原子間距離v.s.基底状態、三重項状態、一重項状態、二電子励起状態におけるエネルギー準位。

図2 原子間距離v.s.基底状態、三重項状態、一重項状態、二電子励起状態における対数エラー。

図3 原子間距離v.s.全状態におけるエネルギー準位。

 

このアルゴリズムにとって最も精度の改善につながるのは初期値の改善であることが改めて確認されました。今後もこれを改善する手法を研究し続けます。

 

[1] M. Cerezo, and et. al., arXiv quant-ph:2004.01372v1(2020)

 

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